フェルメール
フェルメールのどこが好きかと問われれば(誰もそんなことは訊かないでしょうが)、静謐さだと答えます。左側から光が差し込み、右側のしんとした静けさと溶け合うところに人物がいる ”フェルメールらしい” 構図は、みんな同じように見えて、でもみんな惹き付けるものを持っています。
絵の中に激情を迸らせている人が出てこないところも好きです。激怒する人も泣き崩れる人も馬鹿笑いする人もいません。では心が凪いだ人ばかり描かれているのかというと、ちょっと違うと思います。「窓辺で手紙を読む女」「青衣の女」「真珠の首飾りの女」などは、今まさに感情が立ち上がる瞬間であるかのように見えます。すぅっと小さく息を吸う瞬間とでも云いましょうか。
勝手なことばかり云っていてはいけませんね。『フェルメール全点踏破の旅』(朽木ゆり子著 集英社新書)という本を読みました。
フェルメールは現存する作品の少なさでも知られています。真作がどうか疑問符付きのものが数枚あるので、32〜37枚と人により意見は別れますが、なんにせよ少ないです。そして所在地が欧米に限定されるとくれば、多くの人がこう考えるでしょう。
「全部見るのも夢じゃない」
というわけで、フェルメール行脚をしたのがこの本です。新書なのに中の絵や写真はすべてカラーで収録されています。いいですねぇ、こんな旅。
昔フェルメール・ブームが起こったのは、東京で展覧会があったからだったでしょうか。絵がたくさん来たのだったかな。「真珠の耳飾りの少女」が来たのだったかな。東京はいいなぁと指をくわえながら、フェルメール特集の雑誌をいくつか買った覚えがあります。
何点か実物を見たこともあります。ほとんどがオランダ絵画展の一員として来てくれたものですが、1枚だけこちらから見に行ったものがあります。それが冒頭に掲げた「天文学者」です。見に行ったと云えば聞こえがいいのですが、本当はルーヴルで迷子になっている時に偶然出くわしたのでした。うわ〜、こんなところにフェルメールがいる〜、ここはどこ〜、と座った椅子がとても固かったのですよ。
*「天文学者」の画像はWikipediaよりお借りしました。
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