
『わんの実』がでたわん。
待ってたわん。
嬉しいわん。
『わんの実』
(岡崎呼人 白泉社)ですよ。
表紙にいる耳としっぽのついた男の子は、本当は子犬です。
名前はイヌノミ。
マンガではずっとこの姿ですが、人間たちには犬に見えていることになっています。お喋りしても「わんわんわんわんわん」としか聞こえません。つまり「人間の言葉が喋れるわんこ」ではないのです。
イヌノミは訳あって海涼(みりょう)君という新しい飼い主に引き取られます。
海涼君はぶっきらぼうで表情の乏しい男の子です。そして拙いことに犬アレルギーなのです。
でも彼は非常に解りにくい愛情でもって、イヌノミと共に暮らそうとします。その解りにくい優しさはだんだんイヌノミにも伝わっていきます。
これだけならほのぼのとしたお話になるのですが、実は海涼君とイヌノミは、あるものを待っています。どちらも心から待っているのですが、それが訪れたら彼らはお別れしなければならないのです。
こんな持って回った説明では全然お薦めになりませんね。(もじもじと赤くなって)
海涼君は本当は思いやり溢れる優しい男の子です。
でも周りの人にはそのことがあまり理解されず、誤解を招き誹られることもあります。そんな時、彼は言い訳をしません。自分は悪くないことや、親切をしたなどと声高に訴えることをしないのです。
海涼君の優しさは、いつも相手のためのもの。周囲に認められて誉められるためのものではないのです。そのことを、イヌノミはちゃんと見ています。
2人とも、さびしい気持ちを知っています。
だから誰かのさびしい気持ちを思いやれます。
そして、やさしい「優しさ」を持っています。
実はこういう擬人化ものは好きではありません。
でもイヌノミは特別です。
わんこやネコミミって人気がありますけれど、ほんと、好きではないのです。
でもイヌノミは特別です。
....(はっ)....もしや私は隠れケモミミ属性なのでしょうか。
いや、そんなはずは....。
あ、擬人化は好みではありませんが着ぐるみは好きです。
ということは、やはり!
急にぐるぐるしてしまいましたが、作家さんのお話を少ししましょう。
岡崎呼人さんは、キャリアはかなりあるのにコミックスはこの『わんの実』だけなのです。雑誌掲載の数は少なくないのに、ほとんどが読み切りの短篇です。最近はマンガの短篇集は流行らないそうですね。私は1話完結も結構好きなのですけれど、私が好きなだけでは本は出版されません。
どの作品も、心優しい人たちのお話です。
誰かを悲しませるぐらいなら自分が痛みを引き受ける方を選ぶ。そんな繊細な気持ちが、ちょっと寂し気に微笑んでみせるところが大好きです。
今までの物も本になると良いなぁ、と願っています。
多分、短篇集を3冊ほど一気に出せるぐらいには作品が発表されているはずなのです。
いったい何が阻んでいるのでしょう。
ここで横道に逸れて....。
もう1人、コミックス化を待っている作家さんがいます。
モリエサトシさんのご本はいつ出るのでしょうか。
モリエさんも心をそっと震わす作品を手がける方です。そうだ、『わんの実』を気に入ってくださる方ならきっと好きになっていただけると思います。
特に好きだった『猫の街の子』がシリーズ化された時は、今度こそ! と張り切ったのですけれど。うまくいかないものです。
私の趣味が主流から外れているのでしょうか。
お2人とも、これからも静かに応援させていただきますよ。