昨日はひさしぶりに少年合唱のコンサートでした。
なにしろ去年のlibera以来、ほぼ1年ぶりです。
地方に住んでいるとそんなものです。
行ったのは聖トーマス教会合唱団の『マタイ受難曲』。
トマーナを聴くのも初めてなら、マタイを生で聴くのも初めて。
おまけに昨日はブログを通して知り合った方とお会いすることも出来ました。こういう経験も初めてで、1年前には思いもしなかった嬉しいことがたくさん詰まった1日でした。
そろそろ死ぬのかな私。
先にお聴きになった皆様が既に感想を書いていらっしゃいます。
それに比べると相当見劣りするかと思いますが、皆様と同じコンサートを体験できる珍しい機会でしたので、私もそっと末席に加えていただきたく存じます。
なにやら緊張しすぎてハゲそうですよ。
少年合唱でコンサート体験をしたい曲はいろいろありますが、トマーナのマタイはその筆頭でした。願いが叶い本当に幸せです。
バッハの最高傑作とも云われる『マタイ受難曲』。
それをかつてバッハ自身もカントルを務めた合唱団が歌うという最高の組み合わせです。
今回の来日では初期稿が予定されていましたが、直前になって後期稿に変更されたとのお知らせがありました。指揮者ビラーさんの意向だそうです。
演奏は、とても素晴らしかったです。
まず第1曲、導入の合唱です。
合奏が静かに鳴り響き、トマーナの第1声。
「
おいで 娘たち 共に嘆こう」
泣いたのは娘たちではなく私でした。おまえが泣くんかい! と後から自分でツッコミましたが、あの瞬間の感動をどうすれば表現できるのか解りません。
トマーナの合唱は堅牢でしなやか。
とりわけアルトが秀逸でした。合唱は息をのむような豊かな響きで、第33曲ではボーイ・アルトのソリストが、もっと聴きたいと思わせる美しい歌声を聴かせてくださいました。
すぱーんと上へ鳴り響くソプラノを、ふっかりしたアルトが包みます。テノール、バスのお兄さんチームはその年齢ゆえに若々しい声で、少年たちの高音と調和がとれています。
第27曲の合唱「
稲妻も雷鳴も雲間に消えたのか」以降、怒りを歌う場面が増えます。特にこの第27曲の迫力は圧巻でした。非常に強い調子で歌うのですが、力任せ勢い任せにならない完璧に構築された歌い方に彼らの底力を見ました。
それ以外にも数か所ある、レチタティーヴォが歌う合間に1節だけ民衆の声を挟む部分でも声にばらつきは無く、ぴしりと揃った瞬発力で引き締めます。
マタイにはアリアや合唱に印象的な曲がいくつもあります。
中でももっとも多く繰り返されるのが、第15曲の旋律です。高らかに歌い上げられたり、凪いだ水面のように穏やかに歌われたり。終盤、第62曲ではその歌詞と共に再び涙です。(普通に舞台を見ているだけで自然に字幕が目に入る席でした)
少し長いのですが引用させていただきます。
いつの日かわたしが逝かねばならぬとき、
わたしから離れないでください、
わたしが死の苦しみに耐えねばならぬとき、
どうかあなたが現れてくださるように。
わたしの心に
大きな不安があるとき、
どうかわたしをその恐怖から引き離してください
あなたの不安と苦痛の力によって。エヴァンゲリストのマルティン・ペッツォルトさんは絶好調。大きな躰がバチンとはじけそうな熱演でした。ソプラノのウテ・ゼルヴィッヒさんとアルトのエリザベート・ヴィルケさんは、残念ながらドレスの裾しか見えませんでした。どちらが立っても、また2人共立った時でも大きなビラーさんに隠れて見えなかったのです!
第39曲「
憐れみたまえ わが神よ、この涙のゆえに」でヴィルケさんのアルトと共に泣くヴァイオリンが胸に沁みました。
音楽のお話はこれぐらいにしまして....。
会場はとても古い建物で、3時間以上座っているのは辛い椅子でした。まるで「皆の衆、痔になるが良いわ」と云われているかのようです。
客席の傾斜が緩やかなホールでしたから、合奏の後方にいるトマーナが良く見える席はほとんど無かったのではないかと思います。私は右半分ばかり見ていました。
注目したのは....と云うより注目せざるを得なかったのは、最前列右端にいた小さなソプラノ君。
歌いながら顔をボリボリ。着席中は他の団員たちが譜面を見たり前方の演奏者を見ている中、ひたすら指先だか爪だかをいじっていて、それが終われば貧乏揺すり。次は椅子からずり落ちそうなほどリラ〜ックスして、そんな格好でいれば....あくびも出ちゃいます。皆が楽譜を膝の上で開いているのに1人だけ胸に抱え込み、時にはレチタティーヴォに合わせて口パク。毎日マタイで飽きちゃったのかしら。
でもいざ出番となるとひょこっと立ち上がり、頭を振り振り全身で熱唱です。曲調が激しくなるに従い譜面を持つ手にも力が入り、まるでかるた取り名人のような勢いでバシッと捲っていました。かわいいなぁ。
それから1人、元々なのか今だけなのか判りませんが、少し足を引きずっている少年がいました。
合唱団は必要に応じて立ったり座ったりします。ところが第2部後半、合唱がこまめに入るためにソリストが歌う間も立ったまま待機している場面で、その子だけ僅かな待ち時間も腰を下ろしていたのです。周りの少年たちも少し気遣わし気なそぶりです。
おそよ10日間の来日中、毎日のように大曲マタイを歌うハードなスケジュールですから、負担になっていたのかもしれません。それでも最後まで1節もパスすること無く歌い切ってくれました。お名前は判りませんが髪が長めの小柄な男の子、立派なプロでした。
カーテンコールの拍手は長く続きました。
ビラーさん、ソリストの皆さんが何度も登場。ソロを務めたトマーナの団員たちも前へ出てきました。さらにビラーさんたちが呼び戻された後....なんと、あの豆ソプラノ君がすたすたっと前へ出てきてぺこりとお辞儀。客席は拍手喝采!
わからんもんだ(笑)。
ロビーには小さなお店が出ていました。
トマーナ関連はマタイのCDとミサ曲ロ短調のDVDがありましたが、どちらももう持っているのですよ。終演後はCDが良く売れていたようです(そりゃあ感動しましたものね)。でも私が以前買った時の倍近いお値段がついていたのですよ。ちょっぴり複雑な気分でした。
パンフレットがしょぼかったです。当地のみ地元の国際音楽祭(地元なんだか国際なんだか....)に組み込まれていたので、独自のパンフだったのです。歌詞対訳と楽曲、出演者の簡単な解説のみ。トマーナの団員名簿も載っていましたが、名前だけ並んでいても誰が誰だか判りません。これで500円也。他公演ではどんなパンフだったのでしょう。
今日の大阪が最終公演です。
みんなみんな、夢のような時間をありがとう。
☆文中、斜体で引用した歌詞は、本公演で使用された樋口隆一氏の訳詞をお借りしています。
- musique 聖トーマス教会合唱団
- cm:8
- tb:0
- 2008.03.09