ちょっと間が空いてしまいましたが、先週の続きです。
段取りが悪くてなんともお恥ずかしいことです。


伊勢英子さんの
『にいさん』
(偕成社)は、画家ゴッホと弟テオへのオマージュです。
まるで蒼い蒼い水滴が心の中へ落ちてきてずっと消えずにいるような、印象深い青い絵本です。
......表紙、黄色い! 黄色いですよ!
ゴッホについては私などが申し上げるまでもないでしょう。
生前は画家として成功することの無かった彼を最後まで支えたのが、弟のテオです。
本書はテオが兄に語りかける文章で、少年時代から別れの時までを回想します。
幸い、少しだけ
試し読みができます。お時間がございましたらぜひともご覧ください。
表紙は黄色ばかりですが、中の絵ではこの黄色と青がお互いを引き立てていて目を奪われます。実物の青はもっともっと表情のある色で、触れたら指先が染まりそうなほど。
普通のお値段の絵本でこの色が出せるなんて日本の印刷技術は素晴らしい、とあっちもこっちも誉めたくなってしまいます。
今ではゴッホの才能は誰もが認めるところですが、生きている間はひたすら不遇でした。時代が追い付けていなかったのでしょう。
絵描きとして評価は得られず、真っ当な生活もできず、しかも心を病んでいくとあっては、肉親でさえ「お荷物」と疎んじても不思議はありません。けれどもテオだけは生涯兄を愛し続けました。兄弟だから仕方なくではなく、心から慕い、できる限りの援助をしたのです。
彼自身は画家ではありませんが、画商になりました。ゴッホは絵を描き上げると弟に送り、それを売ったお金で画材を揃えて送ってもらっていたのです。そのやりとりはしばらく続きました。
けれども本当は、ゴッホの絵は売れてなどいなかったのです。一枚、また一枚とテオの手元に増えていくばかりでした。兄の絵は売れなくとも商売は上手くいっていたようで、だからこそ真実を隠したままゴッホを支えることができたのかもしれません。
ご存知のようにゴッホは銃により亡くなりました。一般には自殺とされていますが、そうではない可能性もわずかにあります。
いつの頃からかゴッホの最期は『にいさん』の表紙のような向日葵畑だったような気がしていて、猟銃が黄色い死をもたらした、と思えてなりません。
それから一年、兄との距離が耐えられないかのようにテオも亡くなります。
実は格別ゴッホが好きというわけではありません。
ただ、絵を見るなどしてゴッホと向き合う時、考えるのはいつもテオのことです。彼の透き通った結晶のような愛情がせつなくてなりません。
「にいさん」という呼称が呼び覚ます懐かしさとやるせなさは、この兄弟を表すのにぴったりだと思うのです。
出版社のサイトに
この絵本についての伊勢さんのお話があります。
体裁こそ絵本ですが、小さな人たちが楽しむものではなく、どちらかというと大人が読む本かと思います。
そして、そっと大切に....。
- livre 絵本
- cm:2
- tb:0
- 2008.06.05